1. Overkast
  2. Detail Type Foundry
  3. Branding, Content, Interactive, Strategy
  4. 2019

Overkat はデザイン思想のウェブメディア Ékrits の運営などで知られる日本のクリエイティブ・エージェンシーです。Kamimura & Co. は Overkast のチームと協働し、新しいウェブサイトとビジュアルアイデンティティをデザインしました。彼らのプロジェクトはメディアや分野を横断し、複数のパートナーと協働するものが多く、その多様なケーススタディをどのように説明するかが最初の課題でした。

私たちは、これまで複数のプロジェクトで彼らと共に仕事をしてきました。とりわけ、メディア出版事業 Ékrits では、書籍のデザイン、イベントの企画等にも協力しています。Ékrits は Overkast の実験的な精神が強く反映されたメディアであり、彼らの魅力が凝縮された部分でもあります。そこで私たちは、Ékrits に蓄積したノウハウや根底にある考え——デザインの思想をテキストでデザインすること——を、Overkast のビジュアルにも応用していこうと考えました。

当初、プロジェクトはウェブサイトのリニューアルの話題から始まりました。数が増えてきたこれまでのプロジェクトをアーカイブ化する必要が出てきていたのです。私たちはウェブサイトのリニューアルを中心に、ロゴ等を含めたビジュアル全体のアップデートを提案しました。

新しいウェブサイトは、企業のウェブサイトの基本要件を押さえつつ、読みものとしても成立するようになっています。ケーススタディの各ページでは、それぞれの物語が一つ一つ丁寧に説明され、その特徴は、文章の内容だけでなくページごとのデザインとしても反映されています。Overkast の多様なアプローチを伝えるには、同一のフォーマットに流し込まれたテキストよりも、自由な形式で編集されたテキストの方が適切でした。このウェブサイトは管理画面から様々な編集が行えるようになっており、基本フォーマットをベースに、テキスト、カラー、画像ギャラリー、動画等が自由に組み替えられるようになっています。

合わせてアップデートしたビジュアルアイデンティティでは、彼らの考え方を体現するため、確立されたモデルに従わないデザイン方法を試みました。一般的に、ビジュアルアイデンティティの作り方には決まったパターンがあります。それは多くの場合、視覚の同一化戦略——つまり、記憶しやすい象徴的なイメージを用意し、関連物すべてにそのイメージを展開、あらゆるシーンで繰り返し主張を続けることで、見た人の記憶に残す——という方法に基づいています。この方法は一定の効果をもつ反面、よく考えて使わなければ、画一化によって魅力を失ったり、独裁的な力を助長してしまうという問題ももっています。重要なのは、何が記憶するに値するものか?といった問いを見失わないことです。

Overkast のビジュアルアイデンティティでは、単に同一化を拒否するわけではなく、“同一” の範囲の拡張を試みました。キャスト製法、あるいはコピー&ペーストが可能になって以来、同一化は容易になっています。しかし、人間のアイデンティティが単純ではないことと同じように、同一イメージの複製がビジュアルアイデンティティを作る上での絶対的な法則ではないことも明らかです。私たちはこう考えました。「クッキーカッター(金太郎飴)のようなアイデンティティではなく、もっとマルチプル(多様)なアイデンティティを作ることは出来ないのか?」

このアイデアを形にする上で核となったのは、OK Norm と名付けられた専用のタイプフェイスです。これはバリアブルフォント(可変の軸を持ったフォント)として開発されたもので、基本のスタイルに加え、3つの特別なスタイルへの切り替え、さらに、字幅とウェイトの細かなステップの切り替えの機能を持っています。ロゴタイプもこれをベースに設計されており、3つのスタイル、30通りの字幅、600通りのウェイト、つまり、Overkast のロゴタイプには 54,000 のバリエーションがあります。ただ数が多ければ良いわけではありませんが、単一の形状に固定されず、変化を許容するということが、同一化の克服には不可欠でした。

Overkast のビジュアルアイデンティティは、ロゴタイプの他に、表記を短縮した3Dの “OK” マークや、色々なバリエーションのキネティック・タイポグラフィ(アニメーション)など、専用タイプフェイスを用いて作られた変則的なスタイルのビジュアルで構成されています。これは、“力で統一させる” のではなく、“多様なものを多様なまま上手くまとめる” という、エージェンシーの姿勢の体現でもあります。芯を持ちながらも、領域横断的、変則的に広がり続けられる余裕をもつこと。そのような態度が、変化と成長を続ける Overkast のアイデンティティには相応しいものでした。

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